概要
Tellent Recruiteeは、Tellentが展開する3製品構成のHRプラットフォームにおけるATSレイヤーです。アムステルダムで開発されたapplicant tracking systemで、親会社が自社名を前に付けるまでは単体の「Recruitee」として販売されていました。製品そのものは以前と変わりません。同じKanban形式のhiringボード、同じGDPR-nativeなデータ処理、EMEAを中心に約6,000社が利用しています。変わったのは売り方です。RecruiteeはいまやTellent HR(HRIS)とTellent HR Grow(performance)への入口として位置づけられ、ベンダー自身の言葉は「start with recruiting, and add Core HR and performance management when you’re ready」です。
2026年の変更のうち、ロゴよりも重いものが2つあります。プラン階層がStart / Advance / Optimizeに改称されたこと、そして価格がすべてpricingページから消えたことです。公開されていた月額224ドルの下限は、いまやデモ申し込みに置き換わりました。
Recruitingスタックで採用される理由
- 設計段階からのGDPR-native。 GDPR体制下のEUで開発されており、データレジデンシー、候補者の同意フロー、忘れられる権利による削除がいずれも一級の機能です。米国製プロダクトに後付けされたものではありません。欧州の調達では、これが選定基準のすべてになることも珍しくありません。
- hiring manager向けのKanban-first UX。 ファネルはpipelineステージをまたぐドラッグ&ドロップのカードとして表示されます。日常の利用者が、ATSに常駐するrecruiterではなく、週に2回開く程度のhiring managerでも成立します。
- 人間による確認を明記したAIスクリーニング。 Screening Assistantは、hiringチームが定義した基準に対して応募を評価し、どの基準を満たしたかを提示します。Matching Assistantは、新しい求人に対して既にデータベースにいる候補者を再浮上させます。サポートドキュメントには、本ツールが自動不合格を行わないこと、および「all outputs must be reviewed by a human」であることが明記されています。EU AI Act附属書IIIの義務を見据えてAIスクリーニング方針を書く担当者にとって、ベンダーが文書化した自動不合格なしの制約はマーケティング文句ではなく調達上の証跡です。
- 多言語の候補者接点。 採用サイトと応募フローは20言語以上にローカライズされ、上位プランではAIによる求人翻訳も使えます。同一の求人を4つの法域で走らせる場合に効きます。
価格の実態
ベンダーが公開しているのはプランの中身だけで、金額は一切ありません。3階層すべてが見積もり制です。
- Start — アクティブ求人5件、1ページ構成のCareersHub採用サイト、複数求人ボードへの掲載、候補者管理、AIによるメール・フィードバック作成
- Advance — 求人数無制限、複数ページかつ多言語の採用サイト、リファラル、足切り質問、候補者による日程自己調整、オファー生成。Screening Assistantは月100スクリーニング、Matching Assistantは月3検索が上限
- Optimize — Screening Assistantの上限なし、Matching Assistantは月65検索、条件付き自動化、求人票の承認ワークフロー、BI連携、テスト環境、専任account manager
見積もりはプラン、従業員数の帯、請求サイクルで決まります。月払いでも最低1年契約が必要で、年額前払いには20%の割引が付きます。SSO、SMS、WhatsApp採用、Journeys、AgencyHubはいずれも別料金のアドオンです。
第三者のトラッカーはStartを月270〜300ユーロ前後、Advanceを月340〜385ユーロ前後とし、うち1社はOptimizeを月1,374ユーロ近辺としています。これらは方向性の目安として扱ってください。互いに約10%食い違っており、どれも見積もりではありません。有用なのは方向です。かつて公開されていたLaunchプランはアクティブ求人10件で月224ドルでしたが、現在の入門階層は求人5件で見積もり制です。前回この製品を検討したときより、下限は高く、求人枠の余裕は少ないものとして予算を組んでください。
適している用途
- EUに本社を置く従業員50〜1,000名の企業のTA責任者で、機能比較を始める前にデータレジデンシーが調達のゲートになっているケース
- hiring manager主導の組織。recruiterではなくHMがATSの日常利用者であり、定着こそがロールアウトを潰すリスクである場合
- すでにHRISの購入を想定しているチーム。単体ATSではなくRecruiteeを選ぶ実質的な理由は、いまやTellentのバンドルにあります
向かないのは、EUでの採用がない米国本社の企業、または営業と話す前にスプレッドシートで試算できる公開シート単価が必要な場合です。いずれも現在は、まず他を見るべき理由になります。
代替候補との比較
- Greenhouse — 構造化面接と採用レポーティングが主眼で、運用するrecruiting ops担当がいるなら Greenhouse。面接の厳密さよりhiring managerの定着が重いなら Recruitee。
- Workable — 採用が波打つ、量重視、または時給雇用で、オンオフできる求人単位の課金が欲しいなら Workable。EUのデータ取り扱いがゲートで採用が安定しているなら Recruitee。
- Ashby — この価格帯で最も伸びている新興プレイヤーで、定額の月額下限を公開している唯一の選択肢。分析の深さと価格の透明性が決め手なら Ashby。後者でRecruiteeはもう勝負していません。
- Personio — DACH向けスイート戦略。ドイツ語圏でHRISとrecruitingをまとめて買うなら、Recruitee単体ではなくTellentのバンドルと比較してください。
- 従業員1,500名超で複数事業部の複雑性が出てくると、SmartRecruitersやiCIMSへの移行が通常の着地点です。
注意点
- 価格が不透明になり、しかも上がった。 対策:従業員数の帯を明記した形で見積もりを書面で取り、署名前に更新時の値上げ上限を交渉すること。ベンダー自身が従業員数に応じて価格が上がると明言しているため、自社側で何も変えなくても人員の自然増だけで更新時に再価格付けされます。
- Startはアクティブ求人5件が上限で、旧入門階層の半分。 対策:直近12か月の同時オープン求人数の平均ではなくピークを数えること。ピークが6件ならStartは見せかけの下限で、実際の価格はAdvanceです。
- AIスクリーニングはクレジット課金。 対策:Advanceの月100スクリーニングは、応募が多い求人およそ1件分です。Screening Assistantが購入理由なら、2か月目に上限へぶつかってから気づくのではなく、最初からOptimizeで見積もること。
- 公式MCPサーバーがない。 対策:ATSのAPIは公開されており(bearer token、毎分1,000リクエスト)、Zapier、Composio、ApideckなどのサードパーティMCPコネクタが存在します。エージェントのアクセスはそちらに通し、つなぎ込みの工数を見込んでください。ベンダー公式のエージェント経路があるとは想定しないこと。
- AI機能は専業ツールに後れを取る。 対策:outboundのsourcingはjuiceboxやhireEZと併用すること。Recruiteeのアシスタントは既に自社ファネルにいる候補者を対象としており、新規の発掘は担いません。
- 米国でのブランド認知がGreenhouseやLeverより弱い。 対策:hiring managerが米国拠点なら、最初の1か月は選定理由の説明に費やす前提で動くこと。その議論を決めるのはKanban UXのデモです。